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世界一のサービス

パリから列車で40分にあるホテルバブローに3泊した。フォンテンブローの森が近い。

このホテルはムッシュウ・ファーバー(フランス語風に発音すればファーブル)が家族経営し、長年ミシュラン3星を誇っていた。ロケーションはバルビゾン村の田舎町にあり、古民家を改造したホテルである。毎回食事に服を取り換えるため6セット程の衣装になった。私達は馬小屋を改造した一番低い価格の部屋に泊まった。部屋は2階にあり、我々のスーツケースを3つもメイドが運ぶのは気の毒であった。このホテルはいろいろな点で私は世界最高のサービスと位置付けた。過去形なのは既にこのホテルは改築され当時の風情は全くなくなってしまったからだ。よってこれから書くのは昔話になる。

レストランは母屋一階にある。むしろレストランホテルとしての方が良く知られているようだ。パリから車で来るリッチなカップル、地元の名士たちで満席だ。このレストランの給仕長2名のレベルがすごい。他の全てのレストランを含め私はトップにランクする。何がすごいかと言うと、料理を出すタイミングだ。レストランのメニューは女性用には価格が書いてない。女性は費用を気にせずに注文するためだ。支払は男性と決まっていた。家内と私では注文の品が異なる。家内はスープは注文せずサラダから入る。私はスープ、サラダを経てサンジャックコキーユを楽しんでからオントレになる。家内はオントレの後、有名なスフレロワイヤーレを楽しむ、私はシャーベットのみ。こんな具合に二人が異なるメニューを注文した。ところがこの2人の給仕長は絶妙のタイミングで私たちのテーブルにそれぞれのオーダー品を配膳する。料理を食べ終えてカットラリーを置いた時に配膳するのではない。私達が食べている雰囲気、会話の雰囲気を読んで配膳のタイミングを決めているようだ。味はうなる。ボリュームも豊か。家内の頼んだスフレロワイヤーレはメインを終えてから作り始めるので30分は待ってくださいと言われていた。ココットとは呼べない直径20cm近い器であった。私が注文したサンジャックコキーユに使われているホタテ貝柱は直径が5cmのものが12個入っていた。家内はメインはビーフであったが、私は雉のグリルにした。これが長さ50cmの銀のプレートに頭、羽、尾も飾られた状態で兜で蓋をしてあった。ジビエなので私の技術ではうまく肉をカット出来ないと思い、給仕長にカットしてもらった、正解であった。雉は球形の骨の周りの肉を削いで食べるため、下手するとこのソフトボール状の肉が皿から飛び出してしまう。味で忘れられないのはもう1つある。朝食は部屋のベッドに運んでくれる。その中のバゲット、バター、蜂蜜は絶品であった。このベッドの朝食にだされたフランスパンの味はその後、世界のどのパンでも再現できない。外の皮はとても薄くぱりぱり、中はふわふわしっとり。そこへバターと蜂蜜をのせた。快楽を超えた喜びの極限。このホテルは野菜、乳製品、蜂蜜などは自家製であった。

ホテル近くにバルビゾン学派のアトリエが残っていた。アトリエや周辺の果樹園をレンタサイクルで巡った。自転車はミシュランのマグネシュウム製で5kgしかなく小指で持ち上げる事が出来た。サドルを一丸低いレベルにしてもらった。それでも175cmの私の足が地面に着かなかった。果樹園では枝に残っていたリンゴをもいで食べた。完熟したゴールデンで美味かったー。パリへの帰りはタクシーを頼んだ。ドライバー(農家の主人)が途中道端に車を止めて解説してくれた。ミレーは”落穂ひろい”のデッサンを描く時、畑の景色はこの場所で描き、農婦のデザインはアトリエで描き、その後1つの絵に仕上げたとのことであった。なるほど。

このホテルは3食と部屋代で一日あたり15万程かかった。一生に1度のぜいたくであったが、心と記憶に残るレストランサービスであった。

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